2013年06月24日

「空飛ぶ広報室」・・有川浩

昨日ドラマの最終回。
迷った挙句ドラマを見てからこの最後の章を読んだ。
どちらかというと事実をひたすら描写するというまるで紀行文のような文体の本書、有川作品においては珍しい程の感情の抑えっぷり。
ドラマはそれをまるで有川さん本人かと思うような甘い脚色がなされていた。
会話文もほぼそのままかと思う程の完成された脚本。

ただ、本書においてひどく重要な事が描かれているのを気付く人はいるのだろうか、と・・・
それは、自衛隊というものの存在の可否。それを本人たちの口から言わせているということ。
自衛隊の違憲審査は、最高裁まで行ってそれでも保留されているという我が国の最大の矛盾である。憲法で明確に不保持を謳っており、その憲法の改正の方法を持たないという極めて稚拙な国家だった。その健保の改正で自衛隊の存在を明確にしてあげようとすべきは、本来は国民なのではないか。 
自分たちを守るべくいる団体を否定するのは、もはや国の中にいる国民でない人々。その第一歩としての憲法改正法を言いだした安倍首相を極右というのもおかしい。というか、これ以上書くと、余計にネトウヨ みたいになるから、やめておこうっと。 
でもこのドラマの放送が実現したのは、それなりの時期のタイミングもあったんだろうなと思わせられる。

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2013年06月22日

「引き出しの中の家」・・朽木祥

小さい頃TVでやってた「宇宙人ピピ(だったかな・・・?)」が、男の子の学習机の引き出しに住んでたのがうらやましくて、子どもだったからクオリティ低めなのは仕方ないながらも そういう事して遊んだ世代。
「借り暮らし」というか「寸借暮らし」のアリエッティにとどまらず、昔から「小さい人」に対する憧れは絶えない。
私だけでなくて人間みんながそういう風にどこかで思ってるふしがあるんだな。

この小人のサイズはまさにアリエッティレベル。
引き出しにおうちが作れるくらいがいいんだろうなあ。


七重が最後に少しでも登場するのかと期待したんだけどなぁ。 

「かはたれ」「たそかれ」が初朽木作品だったが、この二作を超えるものがなかなかない。
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2013年06月19日

「月のうた」・・穂高明

連作短編は、最近このタイプが多くて、正直「これもね」と思ってしまう。
一話目「民子」二話目「宏子」目線、
ここまではかなりの読み応え。なんだけど、
三話目と四話目は、もうわかってることを繰り返され特に三話目は新しい驚きがさほどなかった事が残念。視点の人物選択はそこでいいとしても、内容が想像を超えてなかった。
宏子(新しい奥さん)の章があまりに良くてそのあと二人分の章で、盛り上がりより盛り下がりに行った感じが二流にしてしまってる。
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2013年06月17日

「笑うハーレキン」・・道尾秀介

文章が、全体的に文学よりになったなと、改めて思った。
内容としては、
まず出だしから「ホームレス話」であったことが駄目だった。
都内は今、ホームレスはたぶんいない。そういう対策なんだと思うけど、かつてメッカともいうべき隅田川沿いも私の知る限りゼロ。
でも読んで行くうちにそこは私有地と判明。まあどうでもいい所にこだわって読むものではないなと。 
しかし、仕事の都合で忙しくなって後半斜め読みになってしまった。
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2013年06月13日

「ザ・万字固め」・・万城目学

主観で言えば、まきめさんらしい一冊だった。
地中海でパスポートその他なくした話は確か一冊目のエッセイに書かれてたと思う。
海パン一個になっちゃったんじゃなかったっけ? 
後半の宇宙話は、実は私も鏡を見ながら(同じく瞳の奥を覗き込むようにして) 宇宙を考えた。考えすぎて怖くなった。その広大な宇宙のその中の銀河系のその中の太陽系の、なかの地球 ですら自分には大きすぎて・・・と、自分の小ささが実感された。
しかも! それに時間軸を加えると・・・考えてると自分が恐ろしく何ものでもない気がした。 

彼の作品をど真ん中に感じられる理由がわかる気がした。勝手にですが。

一番驚いたのは、彼が東京電力の株を保有していた事。
そしてそれで大損したこと。
株主総会に出席したこと。

今年もその株主総会があったというニュースを最近見て。
「ああ・・・」この人たちは売らなかったのね。
と思った。

電力に関して。
いったい今後どんな展開があるのか・・・
身をおもねるしかない我々は、どうなるんだろう。
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2013年06月12日

「ショージとタカオ」・・井手洋子

大阪万博の年に逮捕され、無罪確定が去年。

その年月の膨大さに驚く。

彼らにとっての人生は、そのままこの刑期。

しかし、作中にもあったが、

「もし刑務所に入ってなかったら」の問いに
「ヤクザになって死んでたかも」
とあったのが、なんとなくリアルで

それはこういう捏造があるのはもちろん間違ってるが
それはそれで、こういった彼らの人生も「アリ」なのかもしれないなどと

見当違いの事も思わせられてしまった。
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2013年06月07日

「ふがいない僕は空を見た」・・窪美澄

女性のためのR18文学ということで。
なるほど。 映画化になる理由はよくわかる。
受賞作の一つ目の過激的描写は次第にしかも急速に姿を消し、最後の書き下ろしは、かなりの文学作品だった。

好きな作家「村上春樹」になんとなくうなづく。

みなさんの感想を見ると、初々しく若い人ほど拒否反応が大きいような気がする。 
若さでは容認できない「若気の至り」は、年を経ると意外に受け止める度量が出てくるのだろうか。 

それにしても、本や映画や絵に対して「何がいいたいのかわからない」と言う感想にはがっかりする。何か言いたいから書くわけじゃないでしょ。論文じゃあるまいし。
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2013年06月05日

「私と踊って」・・恩田陸

なんとなく体調悪くて半分読んで放置していた。
でも「夜の底〜」の上下二冊を読めちゃって。 
どうも、最近短編が苦手。
せっかく話に入って行ったと思ったらすぐ終わって次の空気感になじむのに時間がかかる。
ひとつひとつに解説がついてて、なんか恩田さんらしい気もした。 
「交信」が見つけられないなあと思ったら、やっぱり表紙にあったらしく。
図書館ものはびっちり貼り付けられてて読めず!ショック。本の事考えない図書館員が増えてる。昔はこんなことなかったよなあ・・・
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2013年06月04日

「恋文三十年 沖縄仲間翻訳事務所の歳月」・・佐木隆三

仕事の用で。

沖縄の様々な側面がうかがえる。


ドキュメントなので、物語は自分で作らなければならない。一番興味を引いたのは、スキナー理論。心理学にはあんまり興味なかったのに。
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2013年06月01日

「太陽は動かない」・・吉田修一

本当にいろんなものを書く吉田さん。
しかし、それにしても驚く。

AYAKO は峰富士子みたいだったと誰かが言ってた。
その立ち回りを見れば、なるほどねと思う。

NHKをはじめ、日基など、実名ある会社が続々。
 
実は一度、図書館の貸し出し期限が切れて再度のチャレンジ。
本当に、あきらめずに読んで良かった。

愛国心があれば、面白いはず。
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「夜の底は柔らかな幻」上・下・・恩田陸

久々に恩田さんを堪能した。

いつもの風呂敷、今回は随分畳まれてた印象。

出だしはもう、のっけから 説明なしの言語が続々と。
しかし、恩田さんの読者であれば なんとなくの想像は可能で、実邦がどういった女性であるのかも理解した上で読み進められる。

途鎖 これはもう、土佐でしょう。
近くに大歩危小歩危があるというし。

その山にある水晶の谷。

山に入るという事は山の力を受けると言う事。

ヌキをする
という言葉からは、恩田さん独特の世界観がもうにじみ出ようとしている。
三人の少年が生長した後に集う場に
同じような男たちが 連なる。

ラストは賛否両論だが、私はあり だった。
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「国境の南 太陽の西」・・村上春樹

「多崎つくる〜」が、この作品に似てると言うので、文庫に買い直してまだ一度も再読してなかったこれを手に取ってみた。
内容は、記憶にあるのとほとんど変わらず、意外に隅から隅までに近い感じで記憶していた。

ひとつあの頃と違っていたのは、青いワンピースの島本さんと言う少女のイメージ。
どういうことなのか、
普通は一度ついたイメージはなかなか払拭されないような気がするんだけれど

・・・ああ、あの頃はたぶん 成長して家族を持ったハジメと、島本さんと 自分が同じような年齢だったんだ・・・

今はどうしてもそういうスタンスは取れない年齢になってしまったからな・・・・

「一人っ子」ということ
「思春期の少年が、知らず 人の心を完全に傷つけてしまうという」ということ
「ブルーのワンピース」
「ジャズバーを経営すること」
 そういった断片的な事柄が、ずっと忘れないまま
頭の中にあったなあと、思う。

この作品で、村上春樹氏は、初めて主人公に名前をつけたが、
「多崎つくる〜」では、名前を題名にまでしてしまったんだわね。

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2013年05月13日

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」・・村上春樹

本当にひどいことになってると Amazonのレビューを見て思う。
村上春樹を「わからない」という人たちがいて、・・それは、いるのは全然構わないしいて当然だと思うんだけれど、自分が言葉にできないフラストレーションを 別の人が書いたレビューで憂さ晴らしをしている状況が異常だ。
そして、それを面白がって取り上げるマスメディアがあって、常々「村上春樹はわからない」と思ってる人が、「そう!そうなんだよ、よくぞ言ってくれた」的に同じような誰かが拡散する。

私が思う「読書」という動作は、もっと個人的な楽しみのはずだった。
好きな作家が新刊を出すのを心待ちにし、それに対して何か思ったり思わなかったり。
もちろん、すごく売れるという事は、それに付随する様々なものがあって当然なのだろう。
まあ、私も考えれば人の事は言えない。
たった最近でも、宮本輝「草原の椅子」を あからさまに非難した感想を書いた。
腹立ちですらあったから、かなり辛辣にやった。
ただそれが、村上春樹ほどのフィーバーがなかったことと、私のこの感想blogなど目にも止まってないだけのことだ。

異常と思うのは、その記事に付随して、先日行われた京都大学での公開インタビュー時の彼の服装に対する批判である。
彼があの姿で来るだろうことは、彼の昔からの読者なら、当り前のことだった。
さして言うほどの事ですらない。
それを 関西落語家協会のような顔したおっさん(この言い回しよく考えたら、ちょっと笑えてしまう・・すみません村上さん、安西水丸さんのあの顔しか知らなかった頃が懐かしいほど、最近では写真をよく見かけてしまいます)が、秋葉原おたくのようなチェックのシャツに半ズボンで、キャップをかぶり・・・

そんなこと言われたって、何十年も彼はその格好であり、秋葉原オタクの方が後から湧き出てきたんだろうに。
彼に落ち度があるとすれば、今の日本の状況をあまりに知らないということなのだろうか。
彼は基本的にテレビを見ない生活は今も続けているのだと想像する。
なので、随分前だったか「イケメン」という言葉の意味がわからないと、「少年カフカ」だったかな、それに書かれてた。
そのくらい、日本 の「今」 に疎い人だ。
今の日本の 誰もが周囲の空気を読まねばいられない雰囲気を 知らなかった。
ただし、そういった意見にも一切目をやらない、という選択もありで、
たぶん私が心配しなくたって、村上春樹はきっとそうしてるのではないかと想像する。
だって、彼は一度「ノルウェイの森」騒動の時、同じようなことを経験しているのだから。
きっと今度はもっとうまく やれてるといいなと思う。
「もう日本語執筆活動はしない」とかなったら、本当に悲しいから。

そして、今回の小説において 村上春樹 という存在が あまりに経済的に(これはもう出版にとどまらず、今の社会の現状の中で有無を言わさない効力を持つ) 偉大であり続けているから
誰も何も 彼に対して 言う事が出来ないのだ。
編集さん、担当さん そう言った人たちが 必ずしも必要とは言えない場合があるのはわかる。
(ちょっとついでに言うなら、20ページ終わりから三行目の「乱れなく調和する共同体?」。のこのカッコのあとのマルは見落としだと思う)

イマドキの日本で、有意義に留守番電話を活用する人をあまり見かけないこと、(しかも留守番電話を入れるとすれば、それは携帯の方にである) ウィスキーを飲む習慣のある30代はかなり稀である事、そういうことなどが一つ一つ違和感となって、反感を生みだしている気がする。
つまり、現代小説(新刊)であるにもかかわらず、少し空間が 古臭いと 私ですら思うのだから、私より10,20,30 下なら、言わない(気付かない)までも、 何らかのことを感じるのだろう。

じゃあ、その、この話の時代がいつなのか、その限定は?
ある。

彼らの親が団塊の世代で、彼らはそろってごく普通の家庭で、取り立てて遅い生まれでも早い子どもでもない。
だと想定すれば、彼らが30台後半の時代は、やはり今 だ。

「ノルウェイの森」に関しては、彼らの住む時代は今となってはもはや「近代」に属する様相を呈しているが、そこから一歩も進んでない部分には、やはり違和感を感じてしまうのだ。
これと同じような事を「アフターダーク」の時に書いた記憶がある。

村上春樹と言う存在が偉大であればあるほど、誰も彼に何も言えず、彼は孤高を極めることになる。
日本は迎合の世界だしね。
これだけの利益をもたらす大先生に、誰が物申せるというのか、言えるはずない。
書いてもらえるだけで、収益は確実なのだから。

私自身で言えば、これは新刊で買わなかった。
というか、本来はハードカバーを買うつもりがなかった。
いつも、図書館で読み、そして文庫になるのを待って買い求めるからだ。
だけど、ある事情によって、買い求めなければならなくなり、めでたくこの時期の完読となった。

そう考えると、ファンでもないただの乗っかりが新刊を買い求め、真のファンはこうやって古本を買う。
わけですから、経済的な事情を見れば、真のファンである事が、そんなに偉そうに物言う筋合いがあるわけではないなと、思う。









さて内容についての感想です。
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2013年05月11日

「パン屋を襲う」・・村上春樹

「パン屋再襲撃」と言う短編集がある。
その表題作の同名短編の、「再」
再 と言うからには 一回目がある、というわけで、その一回目の「パン屋を襲う」話。
と、その再の方と、あとがき。

これ三つが絵本風にアレンジされてるもの。

紙が厚くて、非常に読みにくい。
蔵書にするか 迷う所。

絵のピエロが、「マック」の「ドナルド」であることを
なかなか気づけないのは、たぶん、色のせい。
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2013年05月08日

「リカーシブル」・・米澤穂信

春季限定〜あたりのシリーズがあまり好みではなかったので、手に取ることはなかったんだけど、たぶん何かの書評が面白かったものと思われる。

ハルカ(ん? 二冊続けてハルカが主人公)
は、父親の再婚相手と彼女の息子との三人で暮らすことになった。
今までいた所を引越し、中学に入ったタイミングで転校。

気付かれないように、そろそろと暮らしていたが、リンカという友達もでき始めた。
その頃、弟のサトルが奇妙な事を言い出す。
そしてその言葉は次第に予言を帯びてきて・・・

森村誠一ばりの、田舎オカルトか?
町内会を上げてのたくらみなのか・・・・

転校生である事。
父親が犯罪を犯して家出、血縁関係のない母親と弟とともに暮らすこと。

そして、この町の不気味な空気。

ハルカの心にのしかかる重圧は重い。

中学生の少女は、大人なら何という事もない事に一喜一憂するものだ。
その感情の起伏がリアルなのではないかと想像した。
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2013年05月04日

「路(ルウ)」・・吉田修一

半月以上前に読み終えたものの記憶をほじくり返して感想を書く。

非常に面白かった。
(草原の椅子の後だからなのか、比較したい感情が湧き出て困る)

台湾新幹線建設を主軸にした物語。2000年から2007年まで。

商社に勤める春香は東京生まれの神戸育ち。
ちゃきちゃきの江戸っ子気質と関西人のユーモアを併せ持つ女性だと思われる。
かつて、台湾旅行をしたときに出会ったエリックという青年のことをまだ記憶の底にもちつつ、今は少し精神を病みつつある彼がいる。
彼の周りには、台湾という社会に適合できない勤勉な同僚があり、台湾人の女性同僚があり、彼女の友人達(台湾の若者)たちがいる。

その昔、台湾が日本統治下であった頃、台湾の高校を卒業した勝一郎は、今はもう妻を亡くし子もなく一人暮らしをしていた。
彼はその昔、自分の親友だと思っていた男と妻を争った。
そしてその時に彼に行った言葉を心に刺さったとげのように抱えて生きていた。

この物語の中で、二人はまったく絡んでいくことはない。
台湾を舞台とした「今」の話と「昔」の物語が、まるで同じとは思えない空気感の中で、しかし時にひんやりとした建物のみでつながっている。

台湾人の若者が数人出てきて、キャラがかぶって時にどっちがどうだっけ?という気になる事もあるにもかかわらず、ものすごくおもしろかった。

阪神大震災。
台湾の地震。

お互いがお互いを つなぐ糸を手繰り寄せたくて 一歩踏み出す時、その意図とは違って自分の人生が開かれて行く。

その人物描写が、あたたかい。

誰かが感想に書いていた「悪人が一人もでてこない」
そういう話だった。
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2013年04月30日

「草原の椅子」・・宮本輝

初宮本輝。
以前からいろいろな人に「いっぺん読んでみ。すごくいいから」と言われて
「読んでみなきゃだな〜」と思っていたが、去年あたり映画化になったこれをと手に取ろうとしたら
図書館の貸し出しが、待ち人数Tにもかかわらず半年くらいかかった。
なんだこれは。

読みました。結論から言うと。 嫌いです。

たとえば、有川浩の「植物〜」において
イケメンで、超料理好き、しかもなんにも取り柄のない目立たない"私”を好きでいてくれて
挙句、風来坊だと思ったらイイトコのぼっちゃんだった
みたいな、「あり得ないオンパレード」で、まさに少女マンガの世界なんだけども
それはそれで、みんな現実はわかってて「こんな男はおらんが、まあ時に甘甘なものもいいじゃないか」といった感じで読む。・・たぶん。

で。
言ってみればこれは、そのおじさんバージョン。
前にもこういう事書いたよな、と思ったら、あれ、白川道の「天国への階段」とかだったかな?
あれに似てる。

このお話、主人公のおっさんは離婚しているんだけど、そんなにドロドロ離婚劇があったわけでもなく
今後の展開に待ちかまえる中年オヤジの少年のような恋心を不倫にしないための離婚。
仕事関係の社外に、親友と呼べる友人ができ、ふと見かけた焼き物やの女主人に一目ぼれする。
ものすごい美人ではないが、清楚で、芯のしっかりした奥ゆかしい女。
その人と、偶然二度ほど再会。

娘は申し分ない女性に成長し、息子もまあまあ骨のある男に育っている。

そして、ひょんなことから DVにあってる5歳児の面倒をみる事になる。

そのくだりが、もうほとほとうんざりする絵空事オンパレード。
それの自覚なく「いい話だ」「ぐっと来る言葉の連続」「心に染みる」みたいな感想が目立つ所に
ゲンなりする。

そろいもそろって糖尿病とか、
モンゴルやらシルクロードやらの中央アジアの大地に憧れを抱き
清楚系のおばさん連れて旅とか、

要するに、50半ばのおばさんの私みたいな人間に、一番受け入れられない物語。

自分が一番世の中わかってるんだよと、言ってはない。
自分もまだまだだと言ってる。言ってるけど「自分が一番エライ」と心の中で思ってるのがにじみ出てる。
社会の中で否定する人がどんどん減って自分が管理職側に行き、それはそれで苦労もあるもんだから
すぐ「若いやつは」っていう。

ゴミが落ちてないのは、若者がいないから?
まさか、ごみ散らかすのはおじさんの方が多いですから。
海は広いな大きいなで、流せば太平洋の藻屑と決めてかかって、そこらじゅうに捨ててしまうのは
あんたたちおっさんですよ。
若者の方が、ずっと道徳教育行きとどいてると思うよ。

上下巻、我慢して読むと、こういう風に言わなくてもいいでしょくらい過激に反発してしまう心が噴出するんだな・・・。
いやいや・・。

この本が世の中的に「感動物語」になってるところに苛立つのかもしれない。

まあこの主人公たちの 言わば妻世代。
夫世代の男のの少年のような心根に、「あほか」と言いたい世代。
一番受け入れない年齢性別の層。それが私なんだろうな、と。

単身赴任してる中年サラリーマンが、新幹線の中で読むのに、ちょうどいいホンです。


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2013年04月26日

「オン・ザ・ライン」・・朽木祥

朽木祥の作品の中では、これは今のところ唯一 合わなかった。

まず、テニスにまったーーーく興味がない。その面白さを全然知らない。
ルールもほとんど知らない。
言葉がわからない。ので、そのあたり斜め読み。

第二に詩が好きじゃない。
詩を書く人読む人、どっちもたぶん、好きじゃない。
気持ちを詩に綴るという感情の吐き出し方が好きじゃない。
詩を書いて、その感情に身をゆだねる人間が苦手。
すごく純粋にそうなのだったら、またそれはそれで気持ち悪い。

第三に友情が事故によって引き裂かれたりつながったりというような話の設定が苦手。
なんというか、物語の設定として卑怯な気がする。

おまけにしゃべらないで楽器で返事する清楚な少女・・・こういうのもあまり得意分野ではない。
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2013年04月25日

「マルガリータ」・・村木嵐

村木さん二冊目。

天正遣欧少年使節の4人の話、中でも千々石ミゲルが棄教したことは、有名。
歴史的にも。

そのミゲルとその妻のたま そして大村純忠の娘 伊奈姫 の話。

なぜ、ミゲルはひとり棄教したのか。
そして妻をもったのか。

秀吉も登場しての歴史物語としての創作。

実際に資料が残っており、しかしその量は圧倒的に少なく。
想像すれば相当にドラマティックな。

この物語を作るにあたって、想像の部分をいかに史実にそぐわせるのか
そこが難しい所であり、楽しい所なのだろうと思うが

ちょっと何かが足りない
面白さに欠けた。

それは我が故郷がこのような形で物語に登場する居心地の悪さもあったのかもしれない。
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2013年04月24日

「冥土めぐり」・・鹿島田真希

なんで予約したのかなあと思いながら読んだ。
出だしから純文丸出しの感じ。

憂鬱な文章で、なんだかもう「何が良くて生きてるのか」わからない他人にすべての原因を押しつけてる感じの女が主人公。

母親と弟がどうしようもないやつで
彼らのために金のある男との結婚を強いられそうな予感が合って
あえてこの公務員と結婚。
好きでもない男と。

その男が脳の病気で下半身不随になる。

天真爛漫で、他人がすべて自分のために動く事を何とも思わない・・・と
彼女は思ってる。

気分が塞いでる時、こういうのを読むと、かなり鬱になる。


と、半分ほどで話がぷつり、と終わる。

ここで、これはもしかして「芥川賞?」と思ったら、やはりそうだった。
ふーん。

二作目は、もっとひどい。

4姉妹のはなしなんだけれど、お姉さんたちのキャラが濃いのか何なのか、煮てるのかその濃さの具合が
誰が誰か、見分けがつかない。

実際いてもそうだったりして。

後半は流して読んだ。



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2013年04月22日

「遠い勝鬨」・・村木嵐

初めての作家さん。

司馬遼太郎の弟子らしい。

時代は江戸初頭。

家康が駿府に引っ込んで間もなくの頃か。

竹千代が幼少期に御学友(って言わないけど)だった松平信綱。
今は18で小姓組頭をしている。
そこに現れた紅顔の美少年 小太郎。
彼の成長と、キリシタンの禁教令の話。

天草四朗が彼でした〜みたいなオチなのかと思ったがそうではなく
後半の話の作りがいま一つ。

前半から中盤まで劇的に面白かったから、残念。




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2013年04月18日

「Tiny Stories」・・山田詠美

いつ頃からだろうか、山田詠美を素直に読めるようになったのは・・・。

世の中をハスに見てる感じの 短編集。
おもしろかった。

「GIと遊んだ話」というのが全部で5つくらいあって、やっぱこの人こんなの書く人だったなあと思ったり。
一番好きなのは、「ガラスはわれるものです」

破魔子が種田正一と暮らし始めた時にはすでに夫は愛人作って家を出てたが「命からがら逃げてきた」と言った。
恋のために幸福な結婚生活を捨てたと言う方がドラマティックだから。
案の定、種田は喜んできつく抱きしめてくれた。
「世界中が敵になってもあなたを守ります」と言って泣いた。
その、二人で住んでるアパートに彼の友人が来て「へ~これが愛の巣?」なんて陳腐な事を言う。
下世話な一般論しか語れない男だった。
命がけで逃げてきた破魔子を思い、借金してこの部屋を借りてくれた種田。
彼だけが純粋だ。
荷物など置く場所もないが、それは家に取りに帰ればいいわけで、夫もそうしてるらしく時々帰宅してるらしい様子がうかがえる。

正一は、破魔子の寝顔を見ながら「何の悔いもない」と思う。
バイト先のレンタルビデオ屋で彼女にあってから、僕は運命の出会いはこういう事を言うのかと思った。
何もかも捨ててくれた彼女のために僕はすべてを捨てることにした。
それを両親に言うと「自立心旺盛な子に育ってくれてうれしい」と言った。
思う存分やれと。
大学は休学届を出しておいてやる。ほれ支度金。
母親はマンションを買ってあげようかというが、それじゃ思い描くラブストーリーにならないので
小さなアパートにした。
「お金はきっと返します」と言ったら「こんなにも大人になった」と感涙にむせび我が子への愛で盛り上がった。

広瀬は未だに解せないでいた。
同級生の種だが急に学校をやめて女と暮らし始めた時、面白半分にアパートに行ってみた。
たかが女と付き合うのに、なんで休学なのかと聞いたら「それが愛に準ずるってことだ」などと薄気味悪い事を言う。
ところがその女ときたら
随分年上。
しかも美人じゃない。
性格も悪い。
何が良くてこの女なのか。


その後、ガラスのポットの注意書きに「ガラスは割れるものです、お取り扱いに注意してください」とあったのを二人で笑っている横で

広瀬がそのポットを割る。

なんだかもう無性におもしろかった。
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2013年04月14日

「リリース」・・草野たき

明良のお父さんは、明良が生まれる少し前に交通事故で死んだ。
医者で、運動神経が良くてバスケットの選手だった。

そのせいで、親戚一同から、明良は医者になる事が当然のように思われて育っている。
親戚の集まりでも成績表を公開しなければならない。

そこは明良にとって不都合はなく、いつも好成績を維持できていた。
だが、明良には悩みがあった。

「医者になんかなりたくない。プロバスケの選手になりたい」
今はこの弱小チームにいるが高校は絶対強い所に行って、狙いたい・・・。

でも、医者になるのが当然だと思われてるところに
何と言えばいいのか。
もちろんそんな夢みたいなことはあきらめろと言われるに決まってる。

そのバスケ部に、新しい部員が入った。
強い学校からの転校生だったから、明良はそこそこ楽しかったが
みんなの手前、楽しくないふりをした。
厳しいコーチがきても、それを嫌がるふりをした。

ある時、女子に呼びとめられて、兄の事を知らされた。
お兄さんはスーパーで万引きしてます。
そしてそれを店の外のゴミ箱に捨ててます。

屈折してると指摘されたのだ。

そんなはずない。
兄ちゃんは料理上手で、家事のプロで・・・

一人家計を支える母親の代わりに頑張ってた・・・

いろんな事が明良のまわりで変化していく。

幼い幼い思考は、この周囲の変化をどう受け止めてどう成長するのか。


実際に子供向けなのかもしれない。
いわゆる大人向けの子ども本とは違う、ある意味リアルな。

なので、大人の私には、青臭くて仕方がない。
posted by honnoasica at 18:52| Comment(0) | TrackBack(0) | その他(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月13日

「RDGレッドデータガール 6」・・萩原規子

書いた感想、全部消えた。DIONの馬鹿!
最近ホントにここも重くて、しかもパスワードでよくハネられるのが本当に困る。

え〜。
RDGもいよいよ最終章。

白い犬になった高柳が意外にけろっと復活して、なおさら偉そうになってる。

この巻の話のポイントは
今まで当り前のように正義の顔して姫神を手中にしてた山伏が、
ホントにそれって正当なのか?という
そこを若い二人が、悩む。

お母さんの紫子さんも大活躍で、今まで実像の出てこなかった脇役が登場したり。

ただ、なんだかな・・・
学園生活の描写が、もうそりゃ退屈で。
泉水子さんが退屈で地味なお人柄なのでしょう。

自覚があるらしく、いつもそれでめそめそしてるし。
だからと言って宗田三つ子みたいなキャラが主人公でも魅力もないし。

ラストはよくまとまっていたと思う。
そのあたりは楽しめました。
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「最果てアーケード」・・小川洋子

気分的には、小川洋子という感じではなく、そうだとしたらもったいないなあと、思いながら読み始めた。

アーケードに生まれ育った(正確には生まれた時はまだアーケードはかぶさってなかったんだけれど)私は、この異空間的な設定にすんなり入って行く事が出来なかったようだった。

東京にもアーケードはあるんだけれど、田舎のような車社会とは違うし、近隣に住む人口が圧倒的に多いとあって、まじめに商売に励めばなんとかやっていけるように見える。

美味しい総菜屋さん、コロッケを揚げている肉屋さん、華美ではなくとも堅実な味の和菓子屋さん、美味しい味を保ち続けているパン屋さん、昔ながらの製法を守り続けレトロさが逆に評判のケーキ屋さん。
その店々の経済をここまで持ちこたえさせたのは、ほかならぬ近隣の人口であろうと、田舎育ちの私は実感として理解する。

我が故郷の島は、日本の(四国以上を除く)島の中ではまあ大きめの方ではあるが、それでも老若男女、赤ん坊から寝たきりの老人まで全部ひっくるめても、東京ドームに入ってまだ席に余裕がある。

といったような、事情を心の奥底に秘めながらページをめくると、これはもう全然楽しめないわけで。
切り離して、小川洋子の世界にえいっと飛び込むのだった。


話の筋の、ほぼ前半で、この少女がこのアーケードという屋根とそこに営みを持つ人々に守られてることはわかってくる。
・・・まあ、よまなくても想像できる、とも言うけど。

お母さんはとうになくなり、最愛のお父さんも、火事でなくす。

え~、この火事がまた、私の記憶とからまる。
我が故郷の商店街も 昭和のちょうど中ごろ、大規模な火災で ほぼ町の中心街のほとんどが焼けた。
私の実家もまた、その炎に飲み込まれた。
私はちょうど、小学校の1年生で、買ったばかりのランドセルも七五三の晴れ着も、壮大なお雛様の面々もすべて灰になった。
家族をその火事で亡くした人は、ほとんどなく、その火事の延焼を防げなかったのは道路の狭さにあった。
人々は、燃えつくす炎を見てもなすすべなく立ち尽くすしかなかった。
。。んだと思う。
子どもだった私は、川の対岸にある親戚の家に逃げて、夜通しなり続ける不気味なサイレンに歯の根をふるわせていただけだった。
翌日からは、しばらくその親戚の家で過ごした。

その時の風景は、この話とは何らリンクするわけでもないが。
(だって、その火事のせいで町が大型商店街に生まれ変わり、その後大きなアーケードが生まれる事になるのだから)

そういったわけで、
たびたび、記憶に横やりを入れられる感じで読み始めたが、
次第にそれは、まぎれもない小川洋子の世界に染まっていき、

まるでガラス越しに見る実演販売のように 少女の息遣い、汗ばんだ皮膚のにおい、ひっそりと出番を待つ「物たち」に目を凝らす事が出来るようになる。

ライオンの取っ手の付いた、くぼみにすっぽりと包まれて
父を亡くした悲しみを 反芻して
そして彼女は生きていく。

この物語の中の犬は、小川さんが長らく飼っていたあの犬なんだろうなあ。



posted by honnoasica at 12:42| Comment(41) | TrackBack(0) | 小川洋子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月09日

「ノエル」・・道尾秀介

三篇の短編・・と見せかけて。

一話目。
いじめられっ子だった少年が大人になって童話作家になる。
その少年には理解してくれる少女が現れ、二人ですこしずつ紡ぐように絵本を作る。
中学を卒業し、同じ高校に進んだ時、事件は起きる。
痛ましくおぞましい事件。
それによって彼らはその後、一切口を利かずに卒業してしまう。

その彼らに同窓会の知らせが届き・・・

この話には、不愉快などんでん返しがあり、「こういうの、やめてくれよな」と思う。
ああ、道尾さんにこういうの、求める人がいるのかな。。。と。
私は、なくていいな。

二話目。
少女は生まれつき足が悪い。名前は莉子。
だから、みにくい、そうおもっている。
莉子の母親のおなかには、赤ちゃんがいる。
彼女は、その子の事をいつくしむ母に嫉妬する。
そして、絵本の中にいる「眞子」と語りあい、母親のおなかの赤ちゃんを・・・

この話にも、不愉快などんでん返し。

ぜんぜんそういう騙し、いらないんですが。

三話目。
定年退職した元教師は児童館のようなところで子どもたちに読み聞かせのような事をしている。
でも、彼は妻を亡くしてから、生きる意味を見失っていた。
子も残せず、また自分たちのしてきたことに意味を残せていないことを残念に思っていた。
そして、もうこの世に何の未練もない、そう思って彼がした行動は・・

三つの話のエピローグ
ここでお話の色はぐっと変わる。
なにもかもが予定調和的ではあるが、ぐんと柔らかな色に包まれる。

そう、そう思えばなおさら、
あの不気味な勘違いを引き起こすどんでん返しなど、

全然いらない。
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2013年04月08日

「ぼくの嘘」・・藤野恵美

題名に惹かれて予約。
この前に「私の恋人」があって、次がこれ。

「私の〜」で、ほんの脇役の男の子と、美系少女の話。

三角ドロドロ関係になるのかと思ってたらそうでなかったのはよかった。

二人の会話がテンポ良くて、
何年後かに書いたみたいだけど、ほんと、うまくなってる。
会話が面白ければ、内容はさほどでもなくても面白いものだ。
posted by honnoasica at 20:32| Comment(0) | TrackBack(0) | その他(は行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月01日

「月と虎」・・柳広司

児童書のカテゴリーにあった。
もともと中国の「「人虎伝」という話をもとにした中島敦の「山月記」という本をモチーフに書かれたもの。
モチーフのモチーフ。
柳さんが児童書っぽく書くとこういう文体になるのか、という。
すごくその感じが良かった。

主人公の父親は、あの難関で有名な科挙に受かってる官吏でありながら
ある時を境にふいと職を辞し、そして行方不明となった。

その後、父の友人の袁参というひとが、父 李徴子に会ったといい
しかも「虎になってた」と言って、その後、金銭的な援助をしてくれるようになる。
そしてどんどん出世するに従い、援助の額も増えていった。

母はその袁参に言い寄ったらしいが相手にされず、「気の利かない男だよ」と吐き捨てるように言った。

ある時、彼は窮地に追い込まれ自分が無意識に凶暴なふるまいをしたことを知らされる。
「僕も父のように虎になるのかな」
そう心配した彼は、ただ一人真相を知るだろう袁参を長安に訪ねるが、彼は家にはいなかった。

そしてそこで対応してくれた書生の言葉を聞き、治安の悪い土地である商於に向かう。
そこは、袁参が虎になった父に会った村だった。

辿りつくと、やはりそこには山賊がいた。
命を狙われ、役人に囲まれ、村人に木につるされるが
果たして、そこの村人は父を知る者たちだった。
李徴子は、村の少女を役人から守るために虎にならざるを得なかった。と。

といったような、道徳的な物語。

表紙の 飄飄とした虎と少年の絵も、
文章の切れ方も、よかった。

漢詩がどこまでモチーフ通りなのか違うのか、それがよくわからないが。
なかなかの厚みを持った寓話として、読める。
posted by honnoasica at 20:07| Comment(125) | TrackBack(0) | 柳広司 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月29日

「体育座りで、空を見上げて」・・椰月美智子

スマホはもちろん、携帯電話一般普及ももまだ、
そして薄型テレビもDVDもipodもない時代の話。
でも、それがすごく昔というわけでもなくたった二十年とちょっと。
(と言うあたりが私が年取った証拠か)

金八先生が終わってなんとかトリオ(金八で有名になった3人)が独り立ちして、じょじょにチェッカーズに移行し・・

ディズニーランドが開園してるから1983年だ。
次女を生んだ年かな
その年に中学に入学してる女の子。
つまりは1970年とかに生まれてる(奥付見たら、作者はまさにそうだった)

自叙伝ではないしにしても、首都圏にほど近い神奈川県の町で、
この三年間の微妙な順番をちゃんと考えて盛り込めるのは自分が経験者じゃなければ難しいからね。
三年間分の心の動き・・。

そうか、その頃は、世の中はこうだったのか・・・
なるほど、その頃の中学生ってこんな感じだったのか・・
そういう事を考えながら読める。

適度に地方で、適度に普通の。
日本の中学生 80年代 という項目で百科事典に載せていいほどの。

塾に通い、適当に部活に励み、男の子も女の子も互いを意識し始めて
あとから思い出したら馬鹿みたいに滑稽で

ある男の子は「おれはもう勉強は好い、すし職人になる」と
いやいや、それって思ったより大変ですぜ、
先輩の理不尽さは学校の先輩なんか比較にならないくらい強烈で理不尽で
先生や親に対して「大人って・・」って言ってた事が以下にアマ太郎だったかを思い知ることになるわけです。

学校の先生のことや 先輩、後輩
そして自分のまわりにいる同級生ともだち、
たいした悩みもなく、淡々と生きてるわっこ。

和光と言う名が「わ」のせいで、いつもクラス替えのたびに一番後ろの窓際の席になる。
そういったことは、もしかしたら人格形成的に何らかの影響を与えたりするのかもしれないよな、と思ったり・・

わたなべ、って人がいたら
最後から二番目になれるかもね。

あいざき、という子が、「あいおい」ってやつが来ない限りおれはたいてい一番目だと
嘆いていたっけ・・・。

何も物語でないんだけれど
大したストーリーもないんだけど
(そのあたりが、ちびまる子ちゃん的なのでしょうか?」

おもしろかった。






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2013年03月27日

「八月の光」・・朽木祥

原爆の話だった。

八月の、そうひかりですね、ぴかっと。
広島の方です。

ただの悲惨な原爆の話というだけに終わらないところが、朽木さんらしい。
三つの短編。

一つ目は、勘の鋭い女性がいた。
美人で、先の事がなんとなくわかってしまう。
彼女はお見合い結婚をしたが、夫は出征して戦地へ。

その彼女が、どうしても今日は行きたくないと言ったその日
原爆が落ちた。

しかし、その介抱をさせたがために、その彼女も放射能を浴びて死んでしまう。

主人公はその彼女の娘。
桜を見に行った彼女が、桜の美しさに見とれて乳母車ごと忘れられてしまった娘。

二つ目。
母と二人で暮らしていた少女。
疎開を薦められて、母は銀行に金を下ろしに行った時、原爆が落ちた。
その母を探しに爆心地へ行く彼女が目にしたのは、
母の影が映った石段だった。

三つめ
助けて、と言った少女の目を忘れられずに生きる少年。
焼けただれ、大きな梁が少女の体を身動きできない状態にしていた。
無我夢中で逃げ田少年。
でも、あの、少女の顔が焼きついて悩ませる。

自分は・・・自分は・・・と。

この三つの話もすこしづつリンクしていて

やかんをもった手がそれごとずるりと落ちていき、
それを拾う人の手もまた・・・


原爆の話は、あまり読もうと積極的に思わなくても、ついこういった形で手に取ることになってしまう。

posted by honnoasica at 20:34| Comment(7) | TrackBack(0) | 朽木祥 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月24日

「メジルシ」・・草野たき

草野さん二冊目。
これは痛々しい。

強がる彼女の、心の痛みをこんな風に描くと、ちょいと痛いです。
お母さんが母親でなく・・

もちろん実の母娘ではあっても
母親自身が、彼女の母親に対して乗り越えられないものを抱えていて
その連鎖で赤ん坊の彼女に、メジルシ をつけてしまった・・

母を愛する父。
その父を疎ましく思う母。

その父と母の間にあって、かすがいになることの叶わない娘。

痛いなあ・・
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2013年03月22日

「空中トライアングル」・・草野たき

ティーン用の棚からごっそり借りてきたせいで似たような話オンパレード。

今度は、すくすく育った少女がいて、同じマンションの違う階に幼馴染の彼がいる。
彼の方が一つ年上の高校生。
彼女は中学三年生。
彼は何でも出来てかっこよくて、そんな彼氏がいてうらやましがられている。

しかし、彼と彼女は昔は、もう一人の男の子を入れて3人で遊んでいた。

彼女はその時のことが忘れられず、また三人で遊んだりしたいと思うようになる。
しかし・・・
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posted by honnoasica at 20:19| Comment(3) | TrackBack(0) | その他(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月21日

「私の恋人」・・藤野恵美

藤野恵美・・
一回ぐらいは何か読んだことありそうで、検索したけれどないので、初めての作家さんでしょう。

何不自由ないすくすく少年が、保健室に寝ていた少女に恋をした。
少女の家は、父と母が家庭内別居状態。
そんな彼女の気持ちを、彼はきっと理解できない・・・そう思い込む彼女は自分の家の話をしない。

「僕の嘘」という別の本があって、この話の続きがそれだと言うので
こっちから。

まさしく、これは一冊では完結してる感じではない。
早く来ないかな。

どうも、こっちの脇役の少年のほうが主人公になるらしい。。。かな。
posted by honnoasica at 20:12| Comment(2) | TrackBack(0) | その他(は行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月20日

「短劇」・・坂木司

「和菓子のアン」の人。
シンデレラティースとかホテルジューシーなんかのシリーズものの、あの人!が、
こんなのを書くと、教えられて読んだ。

別人かと思うほど。
超ショートショート。星新一のような。ブラック具合も似てる。

「本が好き」に書かれたものを二年間分まとめたものらしい。20話から30話くらいある。

▼カフェラテのない日
通勤途中にイイ男を見かけ、それがふわっと消えて幽霊か?と思ったら・・・

▼目撃者
会社の給湯室のシンクがしゃべる。

▼雨宿り
自分の好きな女の子が、お姉さんになる。つまり兄貴の奥さんになる切ない話。

▼幸福な密室
エレベーターの事故で閉じ込めらた。何人乗ってんだ?と思わせて。。
多重人格。。

▼MM
MMという人のスレが面白くて見てたら、な〜んとそれはMM.

▼迷子
道を踏み外した事がない男が、意識的に道に迷う。
いや、これはボケか?・・という。

▼ケーキ登場
幸せな場面に立ち会う数人の人間の心理。

▼ほどけないにもほどがある
電柱に下げる看板を貼る仕事のわざ

▼最後
自殺志願者と見せかけて、最後の日を楽しむ・・・
最後はみんなが・・。

▼しつこい油

▼最後の別れ
最後の兵士、最後の戦い

▼怖いのは

▼変わった趣味
ロボットの世界

▼穴を掘る
とにかく意味なく穴を掘る。どんどん掘る。
そこに女が落ちてくる・・

▼最先端
爪に液晶画面みたいなのを貼るのが流行。でも高架。
ある時、安くできると言うのを聞き・・・

▼肉を拾う

▼ごみ掃除
ごみみたいなやつを掃除する男の話。

▼物件案内
家も家族も親族も何もかもなくした女が駅前を歩いていて声をかけられた。
言い物件がありますよ

▼壁
友人の家で留守番中に発見したのは、壁の穴だった・・

▼試写会
妻に逃げられた男が、試写会に出かけ、その時の映像で目にしたのは、ここに来るまでの自分の姿・・

▼ビル業務
トイレの壁に何か不思議な隙間をみつけて、そこを進んでいくと、どこかわからない場所に辿りついた。
そして彼は、家族とともにその世界の風景となるべく・・

▼並列歩行
公共交通機関のマヒで電車を降りて歩くことに。
ふと、向かいの道を見ると自分そっくりな奴が歩いてる・・

▼カミサマ
死にたくなって、樹海みたいな所に行った。
でもそこで、不思議な光をみかけて追いかけると・・

▼秘祭
17歳になったら参加する村の秘密の祭り。

▼眠り姫
眠り続ける眠り姫。
王子様は彼女の目を覚まそうと、藪をかき分けて入って行くが・・・

▼いて




最初に題名だけ抜き書きしたが、題名だけだとあまり記憶に残っていなかった。
短編と言うのは、その物語の中に入るのにいちいち手順を要するため
比較的読むのに時間がかかってしまうなあと、あらためて思った。

好きなのはごみ掃除。
ほんとにいてもいいよ。

それにしても、和菓子のアン書く人が、こういうのも書いたとはねえ。
びっくりした。
posted by honnoasica at 20:06| Comment(17) | TrackBack(0) | その他(さ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月17日

「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか」・・アレン・ネルソン

ネルソンさんが、海兵隊に志願し、兵士になる訓練を受け、沖縄を経由してベトナムへ行く。

ベトナム戦争のむごたらしさ、非道さは、今までもいくつも映画になっている。

どの映画も、非常に印象的なシーンを含む。



これは、子供向けと言う事もあり非常に読みやすく30分ほどで一気に読了。
だがその言葉の一つ一つは非常に重みある訳がなされている。
仕事でベトナム戦争に関する本を探す中でふとみつけた。
ベトナム戦争に関するものは映画でいくつか見た年代だが、地上戦の残酷さは勝っても負けても人間を人間でなくす。太平洋戦争でアメリカは何も学ばず、
ベトナム戦争でも学ばず、アフガニスタンで同じようにふるまったんだろう。
貧困層が兵隊の下地となるアメリカの国の在り方が垣間見える。

読んだ大人はこの行間に潜むさらなる真実を嗅ぎとらなければならない。
posted by honnoasica at 01:48| Comment(6) | TrackBack(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「ことり」・・小川洋子

ものすごくゆっくり読めた。
他にたまってる本がなかったし。
三行読んではウトウト…朝目覚めてまた読み・・・。小父さんのあゆみとともに一歩づつゆっくりゆっくり一行ももらさないように読んだ。
そうやって読みたいと思うような本をこうやって読めて、本当に幸せだった。

出だしが「ねたばれ」なのは、「ブラフマン」もそうだったけれど、
これも、主人公の小父さんが死んでしまい、メジロが逃げるところから始まる。


ひとつひとつの描写が丁寧で、なにもかもがすっきりと片付いていて

淡い心に薄靄がかかって

よくわからないうちに消えていく。

たった一人で暮らす小父さん、寂しさが身についている。


posted by honnoasica at 01:42| Comment(74) | TrackBack(0) | 小川洋子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月09日

「天使の歩廊」・・中村弦

ある建築家の話。

連作短編の形式を取るが、そうではなく長編の扱い何だと思う。
その感じは、悪くない。

明治14年。その男は生まれた。
笠井泉二。
生まれた時から泰然自若な赤ん坊であった。
洗濯屋の次男として生まれた彼は、まさにトンびから生まれたタカだった。

絵を好み。しかし画家になりたいわけではなく。
建築家を目指した。
その建築とは、この世とあの世をつなぐものを作る事のできる究極とも言える建物。

ひとつめ。大正3年
ある武家の娘が年老いて、亡くした夫を慕うあまり、その建築の注文は予想外のものだった。
まるで、その夫婦二人の墓標のような建物は、明かり取りの窓は太陽の昇り南中し沈む経路に見合っており、光の筋が心の琴線を激しく揺さぶる建物であった。

ふたつめ。泉二10歳
鹿鳴館の次席館員である喜久臣は、小心者。
であるがゆえに、些細な事に怯えた。
鹿鳴館の隠された秘密である地下廊下を、ある時とある小学生の書いた絵の中に見つけ驚愕する。
慌てふためいてそれを書いた小学生に近づくと、彼は「見えた」のだと言った。
「こうして、喜久臣が守ろうとした抜け道の秘密は皮肉にも抜け道自体がその存在意義を失ったあとまで永久に保たれたのだった」と言う所が、この本の中で、唯一ユーモラスな部分である。

みっつめ。
ある作家が、自宅で行方不明になった。
この物語には、笠井泉二は登場しない。彼の名前だけが、建築家として出てくる。
主となる人物は警察官。
その男が、笠井の立てた迷宮で不思議な体験をする。

よっつめ。明治37年。
時代は戻って。
笠井、そして彼に彼らしい仕事を与える矢向と、彼を目の敵にする雨宮、
そして自殺をした堀田という、4人の東大生の話。
ここで、ひとつめの建築に関する、悪役的な建築会社が雨宮のであったことを思い起こすと同時に、矢向との友情も知る。

いつつめ。大正8年。
平丘賢悟と言う男の妹が、笠井の妻だった。
しかし彼女は、亡くなった。おなかの子と一緒に。
そしてそれは、彼と笠井が欧米を研修に行っている間に起こった事だった。
その顛末を 矢向二話す平丘。

むっつめ。大正13年
関東大震災後1年。敷丸隆介は、クスリ屋の丁稚から身を立てた男。
妻は、かつて銀座で牛乳屋を営む家の娘だったが、父親が死に浅草の裏で身を売る女になっていた。
その妻が、たったひとつねだったもの。それが笠井泉二の家。

妻は泉二と幼馴染だった。
しかしお互い、幼い頃に離れたきりで、その後の記憶はない。
幼い頃「キミのために」と言って書いてくれた川の上に建つ家。

昭和7年。
矢向丈明は熱海を目指した。
あの建物の注文主がなくなったからだ。
没落の後の見える華族の男は笠井を今どこへとと尋ね、矢向は満州と答えた。

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2013年03月01日

「クロノスの飛翔」・・中村弦

中村弦さんの二冊目。

普段の生活では、鳩は、どっちかというと・・・という間もなく、大嫌いです。
神社でばさばさ飛んでるのなんかもう全然無理。

昔、寮の食堂の中を鳩が飛びまわっててその中で食事させられてて、今考えたらあり得ない。
それから数年は、卵かけごはんがたべられなかった。

あのてらっと光った首筋も嫌い。
もう、鳩だらけの町で暮らしてますが、ほんと嫌いです。

という私が読んでも面白かったので、面白いんだと思う。

今では、公然の秘密にされちゃった「核の密約」

なんだかいそうでいなさそうな全共闘時代の女学生。
彼女を好きになった新聞記者。

どれも古臭くて、団塊世代のにおいがする。
のに、面白かった。
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2013年02月21日

「私はフーイー」・・恒川光太郎

恒川光太郎の作品は、楽しんで読みたい。
できればゆっくり味わって。

沖縄に住んでるらしい恒川さん。
こういう時期は、そういうことさえ、うらやましいなあ。  寒いです。

沖縄に関する伝承をベースにした話。

恒川光太郎の作品は、リアルな世界とそうでない異空間との距離が近い。
その入り口と出口が、ふとしたところに突然現れる。
その描き方は、実に巧妙で怖い。

ファンタジーとはおよそ呼べないこの世界観を
味わえる人と、味わいたくない人が、いるらしいが。


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2013年02月18日

「ヒア・カムズ・ザ・サン」・・有川浩

有川浩の物語に出てくる男女はいつもストイックで、突き詰めた思考をする。
そもそも、有川作品においてこういった「能力型」の登場人物が出てくることは非常に珍しい気がするんだけれども、そういった事においてもなお主人公はそのこと自体を非常に“うしろめたく"思っている。

・・自分はずるをしている・・・と。

出版社に勤める古川真也が、人に触れるとその人の内部の感情を感じてしまうこと。
カオルという女の子が同じ職場にいること。
カオルの父がアメリカ在住で、彼女と父との間には感情的なもつれがある事。

その出発点から全く違った物語が生まれ、一つは成功をおさめたもの。
そしてもう一つは、自分にない才能をあると過信してアメリカに渡ったが、むこうでホームレスに近い暮らしをしているもの。

どっちの話が好きかと言うのは当然考えられることだとして。
私の場合、考える余地なく前者。

貧乏で金に困ってる男が父とか、それがカッコいいとか、なかなか思えない。
しかも見栄っ張り(そこを可愛いと?思えと? 無理です)。

この物語も、感情の起伏や考え方にすごく若さを感じてしまって、しかもこんな綺麗事の感情(こンなのも十分きれいごと)だけで、成り立つほど人間は甘くないでしょう、と思ってしまうのだった。


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2013年02月13日

「逆回りのお散歩」・・三崎亜記

となりまち戦争」はあまり好きではなかった。
その設定は奇抜で、もともと役所の公務員だったらしい彼の特性を生かしたものだという点ですごく評価できるんだけれども、
まだひとつ未完成な、クオリティに欠ける感じがあった。

その後の作品でそれは次第に解消されていく。
その一つが、「逆まわりのお散歩」であり、「失われた町」

二作目の「戦争研修」が、その「となりまち戦争」の続編だそうで。
読み終わって、「なるほど、そうですか」と。
一つ目の話に関するものだとばかり思っていたため、読み方を間違えた。


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2013年02月05日

「ロスト・トレイン」・・中村弦

初読みの作家さん。
読書メーターでだれかが「良い」と言っていたので3冊借りてみた。

鉄道オタクなら垂涎の話・・・なのかな・・・私はそうではないのでそのあたりはよくわかりませんが。

廃線をめぐる鉄ヲタ。
実際いるのか? いそうな気がする。
タモリさんとか、喜びそうな話のような気がする。

しかも、その廃線を、走るはずのない列車が走る。

その列車が異空間走るのは廃線よりも前の頃からで、最後にそこに辿りつきたい人だけが乗る。

それを探す男女の物語なんだけれども、男の方は彼女に惹かれて付き合ってるだけの感じで
女の方はそれをわかってるのかわかってないのか・・・。

そのあたりの微妙な感じは、リアルと言えばリアル。

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2013年01月03日

「光」・・道尾秀介

純文風・・。

くうな、で言うところの、「風」

というように少しうがった言い方をしてしまったが。

少年時代の思い出。
でもあの「月と蟹」のような重はない。

面白いし、なかなかキャラもたってるし、内容も悪くない。

なのに、なんで「風」って言うのかというと、
あまりにも新しさがないから。まったくない。

比喩の使い方も、心の動きも、何もかも。

こんなに新しさがないと、結構がっかりするのね、と思う。

読んだことない人には、面白いかもしれないけれど、
太古の昔からある、この雰囲気を、もろ手上げて誉める気に
なかなかなれない。
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2012年12月30日

「PK」・・伊坂幸太郎

2012年の12月。とにかく忙しくて、途中で一度死にかけた。
夜寝る前に本のページを開くのが習慣なんだけれど、開いたとたん、寝落ち。
話の内容が内容なので、さくさくっと読むべきだったのに、なんと一か月近くかかってしまったため、なんだかよくわからない感じで読み終えた。

記憶をたどると・・

政治家がいて、その彼は過去に、マンションのベランダから落下してくる幼児をキャッチして助けたことがある。

その政治家はしかし、何者からか脅迫かなんかされてた・・・?たぶん。

あ、出だしは、たしかサッカーの試合で、PKのシーン。
それまで精彩を欠いてた男が、チームメイトの一言で、鮮やかに蘇ってシュートを決める。

なんて言ってたんだろう・・・
と言う引っ張りがあり・・。

ある男の家に友人が遊びに来ていて、そこにセキュリティ会社の男が訪問販売に来る。
「うちのセキュリティは、いかがですか?」と。
しかし、その男の話には、続きの展開がある。
「僕は、未来に怒る犯罪を事前に食い止めています」
「そのために、その犯罪を起こす予定の人を殺しています」
「そしてその通知は、サッカーの試合のニュースにまぎれてやってきます」

そしてその男は、実は、あの政治家が助けた男の子の成長した姿。

そしてそして、その助けられた男の子は、自分の命の恩人の命を狙わなければならなくなる。
被害者数はちょっとした戦争規模。

しかし、それは誤報で・・・・



あああああ。

ほらね、こんな感じで、私は全然話がわかっていませんのです。
誰か、説明してください。


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2012年12月22日

「タイニー・タイニー・ハッピー」・・飛鳥井千砂

かなり待った。年単位くらい。

飛鳥井さんを紹介されて次々に読んだのに、これだけが全然来なくて。
しかもかなり評判がいいと聞き、かなり楽しみ度が上がり、ハードルもそれにつれどんどんうなぎのぼり。

・・・・になったのがいけなかったか。

駄目だった。期待外れ。

主役は北川夫婦。
そしてそれにつながる人々。タイニータイニーハッピーというショッピングモールでつながる。

狭い世界だな・・・
そのせまーい中で、うごうごと恋愛する話が、結構苦手。
島出身だからだったりして。

北川さんの奥さんは、チェーン展開してるメガネ屋の店員。
だからみんな眼鏡君眼鏡さん。
私の行きつけのメガネ屋も、そうです。
眼鏡歴長い私にしてみると、目も悪くないのに賭けてる伊達みたいなのはちょっとヒクのですが。

ご主人は、そのタニハピというテナントビルオーナー会社の社員。
奥さんは、若く見えるため、同僚のじゅんじゅんから、実は片思いされてる。
それを知ってるのは、メガネ屋の向かいの洋服屋のおねえさん。
その人の彼氏が・・・えっと、だれだっけ?

ああ、童顔のカズ君。
どう思ってんのか思われてんのか、不明なカズ君。

片思いしてるじゅんじゅんにも彼女がいて、その彼女はじゅんじゅんを好きなんだけれど、自分が1番じゃないってことを御承知。

・・・てなわけで、関係が、あっさりしてそうで、してない。

チョコレートの町。の、そのあたりがじっとりしてそうで、その実そうじゃなかった
と言うのに比べて、真逆。

もっと若い頃に読んでたら・・・
読んでたら。。。どうだったかな。
posted by honnoasica at 21:17| Comment(13) | TrackBack(0) | 伊坂幸太郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月28日

「サラダ好きのライオン」・・村上春樹

エッセイは、その作家さんの生身が見れる感じがして、好きと嫌いに大いに分かれるもの。

村上さんのは、もともとエッセイと言うか紀行文的な「遠い太鼓」なども大好きで、昔は繰り返し読んだ。今は、なかなかそんな暇がない。
そもそも、再読っていうことをする時間が、なかなかない。

思えば、目の前に出てくる料理を片っ端から食べる、食べたいものは貪欲にお取り寄せしちゃう
みたいな読書傾向にあって、再読っていうのは、生きていく上でした方が有意義かしない方が有意義かって
考えてみるに・・・

今までは、残り少ない限られた時間の中、読めるだけガンガン読む、と思ってたけど
再読しながら「つらつらと」生きるのもいいものなのかもしれない。

ああ、でもこの年になって、まだまだ目標を掲げて生きているわけで、なんだか私の人生もうしろ寄りよね…と思ってしまう。

考えたらそろそろ引退の人もいるかもしれないんだよなあ・・・
政治家なら、まだまだ若い方なのかもしれないけどもね。

話を戻し、村上春樹エッセイについて。

大橋歩さんの挿絵のエッジングがすごく良くて、贅沢なつくりなのね、さすがね。
と思う。

中身は、「村上ですから」という泰然自若 ・・? いやちがう  ゆったりした余裕みたいな
そんな空気感が、ただよう。
要するに、「余裕よね」みたいな。


posted by honnoasica at 12:56| Comment(28) | TrackBack(0) | 村上春樹 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「赤猫異聞・・浅田次郎

江戸から明治への転換期における庶民(下級武士含め)のお話は、浅田さんのお得意とするところ。

「赤猫」とは、火事のこと。
炎がちろちろと飛びすさう様がそう見えるから。
その赤猫が出た時に、小伝馬町の牢の罪人を解き放つという話。

形式は、よくある「聞き込みに行くタイプ」の、この手法お好きです。
読みやすくはあるし、構成もしやすいのかな。

まず最初のご仁は、牢屋敷の、まあいわゆる看守だった下級武士で、明治以降も市ヶ谷監獄の看守。
今なら、法務局の職員かな。
その人から、事の次第を聞き出すところから。

次は、
この解き放ちの中にいた、3人の「いわくつき罪人」の一人。その中の紅一点
ミセス スウェイニィ・コンノート。
もとは、彼女は江戸三大美人と言われた極め付きの美人お仙で、幼いころからの不幸のせいで夜鷹の宗元締めとなっていたものを裏切りにあい、捕縛。
彼女と、今にもうち首になる寸前の博徒、そして維新後も一人戊辰戦争をし続ける若武者とともに
一蓮托生の身に。

今は、その過去も隠さず、お雇い外国人エイブラハム・コンノート夫人になって明治をしたたかに生きている。

その次が、牢名主を務めていた博徒 繁松。
彼も、自分の親分の身代わりとして捕縛され、「すぐ出してやるから」という言葉とは裏腹に
その親方の賂でうち首に決定。
その刑が執行される直前、・・誰もが「こんなのやだよなあ」と思ってる時に
火事発生。
そりゃあ、「さっさと済ませちまいましょう」じゃなく「いやいや待たれい」となるでしょ
ということでお解き放ちになる。

その彼と手錠で結ばれたのが七之丞。あの一人戊辰戦争のお侍。
彼は、身分的には牢屋役人より数段上なので、座敷に起居してるのを連れてこられて
その繁松と繋がれる。

彼ら三人を解き放とうと説得したのが、丸山小兵衛。
しかし彼と対のセット組みになってた、「融通の利かない理不尽な看守」と思われていた杉浦。
彼らは実際は逆の心根。
お互いがお互いの気性をかぶりあっていた。

その三者三様、そして二者二様の五人の物語。

おもしろかった。

それにしても、「小伝馬町の牢」って時代劇にもよく出てくるフレーズで、
東京に住む前から「小伝馬町」と言えば、「牢屋」だと思ってたっけ。
なんだけど、今の小伝馬町、割に近いんだけど、
どこにそれがあったのかな・・・幽霊でも出る話、まだ聞いたことないけどなあ・・
posted by honnoasica at 12:43| Comment(114) | TrackBack(0) | 浅田次郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「ココロ屋」・・梨屋アリエ

四年生のQちゃんが、読書感想文で区長賞をもらったというので、借りて読んだ。
感想文が書きやすそうなお話です。

ある「らんぼうもの」とレッテルを貼られてる男の子が、先生に怒られてしょんぼりしてると
「こころやさん」が現れて、好きなのに取り替えてもらえるという話。

もちろん、そのらんぼうレッテルの男の子は、理由があってやってるわけで、
わけもなく乱暴ものであるわけじゃない。
でも、「乱暴はだめだめだめ」って先生にもお母さんにも言われて、
「そうじゃないぼく」になろうとする。

じっさいは、ここだけでもじゅうぶん「せつない」です。

返しちゃったから詳しいことはわすれちゃったんだけど

まず「しんせつなこころ」みたいなかんじのととりかえる。
すると、非合理や不条理もなにもかも容認するこころになっちゃって
そうなると、やっぱり不具合(それをストレスと呼ぶ?)が起き、交換をお願いする。

その後「すなおなこころ」とかなんだかそういう、自分ぽくないものに変えるんだけど
ぜんぜんしっくりこなくて
挙句に「天然もののすごくきらきらなきれいなもの」を発見し
「それがいい」というと、「客さんのもともとのこころです」となる。

すごく新しいかっていうと、そうでもなく。
でも、子どもにとっては、とてもよみやすい起承転結の見本みたいなもので、
成長期に読むには、なかなか良いような気がする。
posted by honnoasica at 12:22| Comment(5) | TrackBack(0) | 児童書(国内) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月13日

「のろのろ歩け」・・中島京子

中国の北京、上海、そして台湾を舞台にした中編3つ。
非常に面白く読んだ。

◆「北京の白い服」

山下夏美は中国の女性向けファッション雑誌を創刊すべく北京にいた。
彼は、もと中国在住のアメリカ人。

このアメリカ人の彼が夏美に送ってくるメールが、疲れ果てた夏美を一層苛立たせる。
「君がわかってない」「君が理解できていない、それを気づいてもない」
そのトーンで送られてくる文章にも、電話にも。

夏美が「春号」に今年流行る白い服を用意したくても、中国人スタッフは頑として「不可」
のちに気づくが、中国は、「温かくなったからと言ってすぐに半そでを着てはいけない、温かい恰好をしてその温かさに慣れてから冬服を脱ぐ」との言い伝えがあり
「秋になって寒くなったからと言ってすぐに冬服を着ない。寒さに体をならしてから冬服にする」
そうでなくては、体に悪い、病気になる。のだそうだ。

日本の
「季節がやってきたら、いくら暑かろうが寒かろうが、季節の服を先取りして着る。それが粋」
という考え方とは真逆。
日本は、季語などもそうだけれど、四季を意識したものが古来から存在する。
平安期のかさね襟の色なども季節によって決まっていた。
和装などはそれに従ってかなり厳密に、季節によって着る記事が決まっている。

国による根本的な相違と言うのが、あるんだと、創刊してから気づく夏美。
必死に頑張り奔走し、飲み食う彼女は愛らしい。
その愛らしさのわからないアメリカ人男とは、・・きっと別れると思う。

◆時間のむこうの一週間

テレビでも対日暴動は、上海が中心。
そのくらい、日系のお店や企業が進出している町(らしい。行ったことないけど)
その上海に赴任した夫を追ってやってきた佐橋亜矢子。

しかし、迎えに来ると言ってた夫は姿を見せず、一緒にアパートを捜すと言ってた翌日には、
姿も見せないまま出張に。
しかも一週間も帰ってこない。

その一週間に亜矢子が体験した、(言い方はかなり古いが)アバンチュール・・。
部屋を案内してくれるという日本語のうまい女性がやってくるはずが
来たのは男の子。

その彼と、上海の町を疾走する。
上海に来て、ほんとにぽかんと放っとかれ〜の彼女だが

夫は夫なりに必死で働いているではないか。
それは理解してやれよと思うのだった・・・。


◆天燈幸福

美雨は、離婚後一人で彼女を育ててくれた母の死後、母が愛してやまなかった台湾にやってきた。
母が、頼りにしていた、おじさん1,2,3に会うために。

しかし、その途中で台湾人青年トニーに会う。
トニーは、初台湾の美雨を強引に連れまわし・・

この作品が一番好きだという人が多いが、
私は、どうかな・・・
とりあえずこれではない。

けなげに頑張る夏美にほほえましさを感じるのは私が年だからかなあ。
posted by honnoasica at 10:40| Comment(28) | TrackBack(0) | 中島京子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月03日

「ツナグ」辻村深月

「冷たい校舎〜」で、さよならした作家さん。
まだお若いので、どんどん成長されるんだろうなと思いはするが、根本的に無理かなと思っていた。

もちろん映画化をきっかけに読んだ。

連作短編。というカテゴリーでいいように思う。

たった一度だけ、死んだ人に会えるチャンス。
それは誰にも均等に与えられたようでいて、実はそういうわけでもない。
例え、電話番号を知ってもつながらない人はつながらないのだという。

だから、つながった人は、その資格がある人ということになる。

死者の側も、会えるのはたった一度。
だから、会いたいか会いたくないか、そのチャンスを使うのか使わないのか、選ぶことができる。

一話目。
まるで飯島愛みたいな、アイドル(あの人はAV女優でしたが)に、救われた女性が、
飯島愛みたいに死んじゃったその彼女に、会いたいと申し込む。

なんとなく意表を突かれる内容で、かなり好感が持てた。

二話目も三話目もそのあとも、
話の流れや筋に、斬新さがある。

今後、読み続けていくか否か、迷っている。
posted by honnoasica at 17:41| Comment(2) | TrackBack(0) | その他(た行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする